公募研究内容
本領域では,フォトクロミズム研究の新たなフロンティアをめざして,既存のジアリールエテン分子などの改良に加え,これまでにないフォトクロミック分子を新たに開発し,フォトクロミズムの極限性能を攻究し,それとともに,これまでの光メモリ,光スイッチ,金属イオン捕捉の光制御などのような凡庸な応用ではなく,有機分子固有の多様な物性を反映した特異な機能,例えば光照射により動くと言うメカニカル機能などに注目して研究を進める。このことにより,有機分子材料のもつ新たな可能性を開拓することを目的とする。
A01班: ジアリールエテンの極限性能
ジアリールエテンは,アゾベンゼン,スピロベンゾピランに続く第3のフォトクロミック分子として,その存在感を高めてきている。ジアリールエテンは,前2者のフォトクロミック分子と異なり,光生成した異性体が熱的に安定である,繰り返し耐久性に優れている,また,π共役構造が大きく光変化するなどの特徴を有している。A01班では,このジアリールエテン分子に関して,化学修飾によりその光応答性能を極限にまで高めることをめざすとともに,他のフォトクロミック分子では実現していない特異な機能を探究し,それらをもとにフォトクロミック分子研究の分野を広げることをめざす。ジアリールエテンは,その色変化が顕著なためそこに注目が集まるが,その本質は電子状態の異なった分子へと高速にまた光可逆的に変換することにある。この本質をふまえた研究課題を推進する。具体的には,ジアリールエテンの反応性の理論計算,反応ダイナミックスの解明,さまざまに化学修飾することによる光発色領域の拡大(赤外域への拡大あるいは紫外域に限定する),熱安定性の制御,蛍光特性の付与,結晶あるいはアモルファス反応性の付与などに取り組む。また,これまでの蛍光特性,磁性,電導性などの光スイッチに加え,単結晶のフォトメカニカル機能の発現と応用探索,ジアリールエテン薄膜の表面モルフォロジー・物性の光制御,およびその他さまざまの固体物性制御などを研究課題として取り上げ,基礎から応用までの幅広い研究分野の構築をめざす。
A02班: 新規・高性能フォトクロミック系
従来のフォトクロミズムの研究は「初めにフォトクロミック分子ありき」であり,「分子を修飾する」あるいは「分子に機能を付け加える」形の研究が主であった。しかし,そのような研究スタイルは過去のものである。本班では,要求される機能に着目し,そのために必要な分子を設計し,最新の合成化学的手法を駆使して目的分子を創り上げる。その中には,従来存在しなかったフォトクロミックシステムを創り出すこと,過去に既に知られているがこれまでほとんど顧みられることのなかったフォトクロミック化合物に再度光をあてて,魅力あふれる化合物に創り上げること,圧倒的な合成力を駆使して,これまで考えられなかった機能をもつフォトクロミック化合物を創り上げること,などが含まれる。そして,ジアリールエテンをはじめ,従来存在するフォトクロミッ化合物を様々な面で凌駕するものを創生し,時代を支配する新たなフォトクロミックシステムを創出することを目指す。
A03班: 光メカニカル機能の創出
フォトクロミック反応の特徴は光照射によって分子形状や極性・屈折率などの特性が同時に可逆的に変化することにある。一方光は,波長,強度,偏光特性,伝播特性,干渉性,空間多重性など,他のツールでは実現できない多くの情報を同時にあわせ持つ,際立った特長をもつ。それを受け入れるフォトクロミック材料系を適切に設計・材料化することにより,先進的な光応答システムが創出できると期待される。A03班では,フォトクロミズム研究にてここ数年で急速に進歩を遂げつつある光メカニカル機能の創出と実証を軸に,種々の光応答システムの創出を目指した研究を進める。当班では,特に分子や高分子の集合(組織)体や材料化・プロセスからのアプローチに重点をおき,本特定領域研究における材料化の側面からその体系化に貢献する。こうした研究には,分子レベルでの0次元系,繊維組織や配向膜上での物質運搬や移動等の1次元系,単分子膜や薄膜における光誘起伸縮や物質移動等の2次元系,材料の屈曲・伸縮,光相分離制御などの3次元系,時間軸制御も組み入れたベクトル的変形や生物機能の光制御等の多次元系などが想定できる。また,直接メカニカル機能に至らずとも,フォトクロミック系を利用した斬新な材料の構造や物性制御や光応答システム構築の提案も歓迎する。こうした研究アプローチを効果的に推進し,光メカニカル機能およびその関連分野での光機能化学の新たな概念の発信と創出をめざす。
